マルチクラウドの活用とアプリケーションのモダナイゼーションへの取り組みが加速する中、複雑さに伴う新たな課題が生じています。VMwareは、マルチクラウド時代に備え、旧来のクラウド管理ソリューションを統合して、クラウド管理にシンプルさをもたらす新たなプロダクトをリリースしました。それがVMware Ariaです。本記事では、個別の機能紹介も交えながら、VMware Ariaの全体像について解説します。
目次
- クラウド活用の大規模化に伴う課題と、新たなアプローチの必要性
- 共通プラットフォームとデータストアがもたらす次世代のクラウド管理
- クラウド管理における様々なチャレンジを解決するEnd-to-Endソリューション
- VMware Ariaを試してみるには
クラウド活用の大規模化に伴う課題と、新たなアプローチの必要性
デジタルビジネスへの変革が進む中、それを支えるクラウドの利用規模も急速に拡大しつつあります。また必要に応じて、複数のパブリッククラウドを使い分ける企業も増えつつあり、今後マルチクラウド化が進むことは確実と言えるでしょう。
しかしビジネスへのクラウドの本格活用が進み、大規模な利用が増える中で、以下のような課題にお悩みの担当者は多いのではないでしょうか。
1. 安全なゾーンへ迅速にアプリケーションを配置するにはどうすれば良いか?
様々なクラウド環境へアプリケーションをデプロイする時、迅速さだけでなく、環境のセキュリティを担保することが必要です。その際、組織のアカウントやロール管理など、様々な設定にも注意を払わねばなりません。
2. 各クラウドプラットフォームへ継続的なポリシー適用ができているか?
開発者などユーザー側の自由度が高いことは、クラウドの特性の一つです。日々の運用で様々な変更が加えられる中で、自社の運用ルールやセキュリティポリシーを継続的に適用していくことは、大きなチャレンジとなります。
3. コストとパフォーマンスのバランスを適切に最適化できているか?
クラウドの高いスケーラビリティは、メリットであると同時に、コスト増大をもたらす恐れがあります。しかし、コストが適切な対象に使われているか確認するのは、容易ではありません。
4. 複数クラウドプラットフォームにわたりコスト・セキュリティ・パフォーマンスの観点から統合的な視点を持っているか?
利用するクラウドプラットフォームが増えれば、その分インフラは複雑化し、可視性が低下します。運用負荷とコストの観点から、統合的なクラウド管理の必要性が増しています。
複雑さを増しているのは、インフラだけではありません。コスト管理、運用管理やログ管理・可視化、構成管理やCI/CDなど、様々なツールがクラウド管理に利用されています。それらが、環境ごとに個別最適で活用され、それぞれに専用の運用チームや運用モデルが存在している状況も珍しくはありません。こうした「クラウドのサイロ化」が進んだ結果、人海戦術による問題解決や、可視性を損ないセキュリティ対策が後手に回ってしまうような状況が生じかねません。
マルチクラウド環境においてこれらの課題を放置すれば、状況はより一層深刻化します。そこで、クラウド管理の複雑化に対処する新たなアプローチが必要となります。
VMwareの新たなアプローチとは、共通のプラットフォームとデータストアを活用することで、様々なクラウド環境で一貫性のある管理ソリューションを提供することです。それを具現化したのが、クラウド管理のための新たなソリューションブランドである、VMware Ariaです。
共通プラットフォームとデータストアがもたらす次世代のクラウド管理
VMware Ariaは、コスト、パフォーマンス、設定、デリバリーの自動化など、これまではVMware vRealize、Cloud Health by VMware、VMware Tanzuの3つのブランドにまたがって提供されてきた機能を統合した、マルチクラウド管理プラットフォームです。
- VMware Aria Cost:クラウド財務管理の簡素化(旧CloudHealth by VMware)
- VMware Aria Operations:クラウドの可視化と運用管理(旧VMware vRealize Operations)
- VMware Aria Automation:Infrastructure as Codeをはじめとしたインフラ構築の自動化(旧VMware vRealize Automation)
統合の要となるのが、新たな共通のプラットフォームとなるVMware Aria Hub Powered by VMware Aria Graph(以下、VMware Aria Hub)と、データストアとなるVMware Aria Graphです。VMware Aria HubとVMware Aria Graphは、クラウド管理に以下の3つのメリットをもたらします。
1. 統一されたデータベース
従来の運用管理では、コスト、運用、自動化など個別の管理ツールがそれぞれ情報を保持していたので、意思決定時の情報収集が不十分、かつ非効率的になりがちでした。一方、VMware Aria Graphでは単一のグラフデータベースに情報を保持しているので、データ統合や連携の手間なしに、アプリケーションやインフラの情報の関係性を可視化することができます。
2. 単一のインターフェース
従来の運用管理では、目的別に様々なツールが存在していました。つまり情報を取得するには、ツールごとに個別にログインやAPIコールが必要になります。この煩雑さのせいで、チーム間の連携が困難になりがちでした。しかしVMware Aria HubとVMware Aria Graphでは単一のインターフェースとAPIコールで、必要な情報をまとめて取得できるので、シンプルな管理と、チーム間のコラボレーション促進につながります。
3. 複数テーマを横断するエンドツーエンドソリューション
実際の運用管理では、複数のツールにまたがって解決が必要なユースケースがあります。しかし上記に挙げた理由から、カスタムでのインテグレーションを組もうとすると、非常に面倒な作業が必要でした。VMware Ariaでは、コスト、運用、自動化の機能がVMware Aria Hub上で統合されているので、複数の領域にまたがるエンドツーエンドのソリューションを提供することができます。
VMware Ariaによるクラウド管理は、単一のインターフェースであるVMware Aria HubのGUIやAPIを介して行われます。利用中のクラウドをVMware Aria Hubに接続することで、グラフデータベースを活用した依存関係や隣接関係の可視化、セキュリティポリシーへの違反情報、コスト情報や、その他個別のメトリックの可視化などが可能になります。さらにアプリケーション内で稼働する複数のサービスの情報を横串で取得したり、特定のインスタンスの詳細情報を個別に深掘りしたりすることもできます。つまりVMware Aria Hubは、コスト、セキュリティ、コンプライアンス、インフラといった様々な情報を横断して、統合的なユーザーインターフェースのもとで管理する手段を提供します。その結果、複数のチームが連携し、複数のクラウドで「今、何が起きているか」についての共通認識を確立しながら、一元的な管理を実現することができます。
VMware Aria Hubのインターフェースや具体的な機能について、こちらのブログ記事で詳細に解説しています。ぜひチェックしてください。
クラウド管理における様々なチャレンジを解決するEnd-to-Endソリューション
VMware Ariaが提供するのは、VMwareの既存プロダクトを発展させたソリューションだけではありません。VMware Aria HubとVMware Aria Graphの基盤の上に、新たに3つのソリューションをリリースし、クラウド管理に伴う新たな課題の解決をEnd-to-Endで支援します。
クラウドのガバナンスを強化するVMware Aria Guardrails
VMware Aria Guradrailsは、クラウド環境のガバナンスに対してモダンなアプローチを提供するソリューションです。具体的には、クラウド環境とポリシー定義のテンプレート化により、サービス展開とその後の運用におけるあるべき姿を定義して、継続的にポリシーを矯正していくことが可能になります。またテンプレートに反するポリシー違反を可視化して抽出することで、クラウド環境の可視性を高めます。さらに、それらの問題が生じた際には、事前に定義した手順に基づき、自動修復する機能も提供します。このようにVMware Aria Guradrailsは、Code as Everythingのアプローチで、行動ベースの自動的なガードレールをマルチクラウド環境にもたらすことができます。
クラウドへの移行をシンプルにするVMware Aria Migration
ワークロードをデータセンターからクラウドへ移行する作業は、長く複雑なプロセスになりがちです。特に大規模なアプリケーションでは、対象となるワークロードの可視化、移行計画の作成、実際の移行作業などのプロセスを、何度も繰り返さなくてはなりません。これらを手作業で行おうとすると、不正確な計画による手戻りや、セキュリティとコンプライアンスの脅威を招いてしまいます。そこでVMware Aria Migrationは、VMware HCXと連携しながら、クラウド移行に伴うアセスメント、計画、実行のプロセスを自動化します。その結果、クラウド環境への移行を安全かつシンプルにし、移行元と移行先の健全性を担保することに貢献します。
AI/MLによるクラウド環境監視 VMware Aria Business Insights
クラウド環境から流入する膨大なデータを運用管理に活用するには、ノイズを除去して、関連する重要な情報のみを抽出する必要があります。そこでVMware Aria Business Insightsは、AI/MLやデータ分析を活用して、アプリからインフラにまたがる膨大な構造化・非構造化データからリアルタイムで知見を引き出します。アプリとプラットフォーム全体の状況を自動的に整理し、ノイズ除去済みのビジネスにインパクトを与える洞察を提供することで、ビジネスダウンタイムの排除とMTTR(平均復旧時間)の低減、将来的な問題の予防や、チーム間のコラボレーション促進に貢献します。
VMware Ariaを試してみるには
クラウド管理の新たなアプローチとして、VMware Ariaの全体像をご紹介しました。VMware Ariaによる次世代のクラウド管理を試してみたい方は、ぜひ下記のリンクから、VMware Ariaのフリーティア(無償版)にサインアップいただけます。
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