課題を解決

仮想マシンの移行のカギはバックアップにあり
vSphere 8・マルチクラウド対応を見据えた移行のポイントとは

2022/10/27

コンテンツ提供:SB C&S株式会社

2022年9月、VMware vSphere 8が発表されました。アップデートの際は仮想マシンの移行作業についても検討が必要になります。同時に、マルチクラウド時代を迎えたIT環境は多様化の一途を辿っています。オンプレミスと様々なクラウドを併用することが当たり前になったことで、仮想マシンの移行も複雑化しつつあります。vSphere 8のリリースを機に、バックアップと移行方法を見直してみませんか?

そこで本記事では、SB C&S株式会社の大塚 正之 氏と土肥 達郎 氏が、多様化するIT環境に対応した、バックアップツールを用いた移行のポイントについて解説します。

SB C&S株式会社 エバンジェリスト 大塚 正之 氏
SB C&S株式会社
エバンジェリスト(VMware vExpert 2022)
大塚 正之 氏

SB C&S株式会社
ICT事業本部 技術統括部 第1技術部
土肥 達郎 氏

目次


マルチクラウド時代の移行における課題

マルチクラウドの活用、すなわちオンプレミスや様々なクラウドを適材適所で組み合わせることが一般化しつつあります。マルチクラウドには、生産性と利便性の向上、ベンダーロックインの回避など様々なメリットがある一方、管理者の観点からは様々な課題も生じています。多様化に伴う管理の複雑性は、多くのIT担当者を悩ませている問題です。

それでは、マルチクラウドにおける仮想マシンの移行では、具体的にどのようなことが課題になるのでしょうか。

(1)  環境ごとに異なる仕様への対応

ワークロードの多様化に伴い、仮想マシンの稼働環境も分散しつつあります。しかしパブリッククラウドにおいては顕著ですが、環境ごとに仮想マシンのフォーマットが異なり、他の環境からの移行手段もまちまちです。ワークロードの移行にあたっては、これらの違いを踏まえた上で、都度移行プランを検討する必要が生じます。

(2)  移行作業のサイロ化

ワークロードが様々な環境に分散すると、移行先の環境ごとに手順が異なるため、その分作業量は増加します。その結果、環境ごとに異なる担当者がつき、運用ポリシーの乱立や、担当者間での情報共有、問題発生時の検証が妨げられるなど、サイロ化に伴う様々な弊害を招いてしまいます。

(3)  学習コストの増加による弊害

クラウドでは、独自の課金体系など、他にも様々なポイントに習熟する必要があります。学習コストや期間の増加以外にも、従来の運用におけるベストプラクティスを流用できないため、思わぬコストの増加やミスを招いてしまいがちです。

これらの問題が積み重なった結果、IT担当者の負担が増えるばかりでなく、最悪の場合、移行作業のために業務を止める必要が出てくるかもしれません。移行が業務に悪影響を及ぼすことは、決して望ましい状況ではありません。

バックアップツールによる移行のすすめ

そこでお勧めしたいのが、サードパーティーのバックアップツールによる移行です。仮想化が普及したことで、バックアップツールは、データの保護だけでなく、仮想マシンのイメージを丸ごとバックアップする用途にも使われるようになりました。当然、バックアップツールにはイメージのリストア機能も含まれており、異なる環境への移行にも活用することができます。一方、vSphere環境の標準的な移行手段としては、OVF(Open Virtualization Format)形式で仮想マシンのエクスポート/インポートを実施する方法や、vCenter Coverterというツール利用した方法があります。そこで、これらの標準的な移行手段と比較しながら、バックアップツールによる移行のメリットを紹介します。

(1)  コントロール性の高さ

バックアップツールを用いることで、日時によるスケジューリングやログの追跡といったジョブ管理、差分バックアップによる履歴保持など、OVFエクスポート/インポートやvCenter Converterでは難しい作業が可能になります。ファイル単位や任意の時点のイメージでの復元など、細かい粒度の作業にも対応します。

(2)  業務を止めないバックアップと移行

OVFエクスポート/インポートによる移行の場合、必ずシステムにダウンタイムが発生します。またvCenter Converterによる移行の場合でも、移行元のアプリケーションを停止しないと、データの不整合などが発生する可能性があります。一方、バックアップツールは、バックグラウンドでの動作を得意としています。イメージの差分バックアップだけでなく、移行についても、業務を止めることなくシステムを稼働させたまま実施することが可能です。

業務を止めない、仮想マシンのスムーズなバックアップは、どのように実現されているのでしょうか。実はバックアップツールは、VMwareプラットフォームと密接に連携して動作しています。具体的には、vSphere Storage APIsを介して、仮想マシンのスナップショット(VMDKファイル)を取得します。バックアップ中に仮想マシンのデータが更新された場合、差分ファイル(REDOログ)も取得し、スナップショットが削除されるタイミングで、差分をバックアップにマージします。こうしてバックアップツールは、VMwareが提供するプラットフォームの仕組みをうまく活用しながら、システムを止めることなくバックアップ作業を行うことができるのです。

バックアップとvSphere Replicationの違い

バックアップとよく比較される機能として、レプリケーションという手段も存在し、vSphere環境ではvSphere Replicationの機能が提供されています。両者の違いはなんでしょうか。バックアップの場合は、バックアップ用のストレージに仮想マシンのイメージを保存します。一方vSphere Replicationの場合は、仮想マシンの複製先として、複製元と同一環境のサーバを常時稼働させておく必要がある点が異なります。またバックアップツールはイメージの取得タイミングをスケジュールで設定できるのに対し、vSphere Replicationの場合はRPO(目標復旧時点)で設定するという点も異なります。レプリケーションが災害対策などで素早いサーバの復旧が必要な用途に適しているのに対し、バックアップツールは環境のアップグレードやマルチクラウド化に伴う環境移行に適しています。vSphere Replication の詳細はこちらの記事をご覧ください。

マルチクラウドにおけるバックアップ・移行の考え方

それではマルチクラウドなど様々なIT環境が混在する中で、バックアップツールをどのように活用していけば良いのでしょうか。

まず前提として強調したいのが、そもそもクラウドにおけるバックアップの重要性です。というのも、パブリッククラウドで担保されている冗長性は、あくまでハードウェアの故障など事業者のトラブル時におけるデータ保護を目的だからです。ユーザーの誤操作による削除やセキュリティインシデントなど、オペレーション面のトラブルにおけるデータ保護は、クラウド事業者によっては担保されず、バックアップツールによって実現する必要があります。

もう一つ重要なポイントが、プラットフォームを跨いだバックアップの実施です。同一のデータセンターやクラウドのバックアップでは、インフラ障害の性質によっては、バックアップからの復元に支障をきたす場合があります。遠隔地や異なるプラットフォーム間でバックアップを取ることで、こうした状況を回避できます。このように、バックアップの観点からも、マルチクラウドには大きなメリットがあります。

こうした前提を踏まえた上で、マルチクラウドにおけるサードパーティバックアップ製品の活用には、以下のようなメリットがあります。

(1) 多彩な環境への復元シナリオに対応

バックアップツールは、vSphereをはじめ様々な仮想化環境やクラウドに対応しています。そして、吸い上げたイメージをそれぞれの環境に合わせて変換してリストアすることにも長けています。その結果、オンプレミスとクラウド、異なるパブリッククラウド間といった、様々なマルチクラウドへの移行をシンプルに実現することができます。

(2) バックアップ・移行の集中管理

同じツールで様々な環境のバックアップや移行を集中管理することができるので、環境別に異なる手順を作る必要がなく、運用ポリシーが統一され、担当者間の情報共有や問題発生時の検証をスムーズに進めることができます。その結果、マルチクラウドに伴うサイロ化を防止することができます。

(3) 今までの運用ナレッジを有効活用

ワークロードがあらゆる環境に広がっても、使い慣れたバックアップツールをそのまま使えるので、従来の運用におけるベストプラクティスを流用することができます。その結果、学習コストの削減や、運用の最適化に貢献します。

このように移行のHubとしてバックアップツールを活用することで、マルチクラウド活用に向けたハードルやサイロ化による弊害を、効果的に取り除くことができます。

SB C&Sでは、VMwareプラットフォームのバックアップ・移行に関わる様々なご相談を承っています。またC&S ENGINEER VOICEというサイトで、具体的なバックアップ製品の紹介も含め、様々な情報を発信しております。マルチクラウドに向けたバックアップ・移行の見直しを検討したいお客様は、ぜひお立ち寄りください。


SB C&S が提供する VMware ソリューションについては、こちらの Web サイトでも紹介しています。

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