物理サーバや古い基盤で運用していた仮想マシンを新しい基盤に移行する手段には、インフラ機能を活⽤した移⾏⼿法およびツールを活⽤した移⾏⼿法によるいくつかの選択肢があります。このうちツールを活用した移行手法の1つとして、VMwareが提供しているのがVMware vCenter Converterがあります。2023年4月にVMware vCenter Converter 6.4 がリリースされ、AWS EC2 インスタンスの移行にも対応しました。今回は改めてvCenter Converter についてご紹介します。
目次
ツールを活用した代表的な移行手法
VMware vCenter Converterとは
vCenter Converterは物理マシンや他社のフォーマットの仮想マシンからVMware の仮想マシンへの変換や、古い仮想マシンを新しいフォーマットへ変換を提供するソリューションです。
ウィザードベースの簡単な GUI で操作できるのが特徴で、仮想マシンの移行作業を大幅に簡素化・省力化します。
vCenter Converterを利用することで、VMware vSphere上の仮想マシンはもとよりHyper-V Server上の仮想マシンや物理サーバー上にインストールされているオペレーティングシステムなどもインポートして移行することができます。さらに最新版のvCenter Converter 6.4では、vSphere 8.0をサポートするほか、AWS EC2ワークロードをVMware仮想マシンへ変換することも可能となり、マルチクラウド環境を展開する際に活用することができます。
なおvCenter Converterは仮想マシンを移行するだけでなく、仮想マシンの再構成にも利用できます。
サポートする移行元OS
vCenter Converterは、移行元のOSとしてWindowsおよびLinuxをサポートしています。
最新版のvCenter Converter 6.4がサポートしているWindowsプラットフォームは下記のとおりです。
- Windows Server 2012 (64-bit)
- Windows Server 2012 R2 (64-bit)
- Windows 10 (32-bit and 64-bit)
- Windows Server 2016 (64-bit)
- Windows Server 2019 (64-bit)
- Windows 11 (64-bit)
- Windows Server 2022 (64-bit)
なお情報は随時更新されています。Windows以外のインストールプラットフォームを含め、最新のサポート状況は製品マニュアルや下記のリリースノートを必ずご確認ください。
サポート及びライセンス
vCenter Converter Standaloneは、下記のvCenter Converter製品ページから無償でダウンロードしてご利用いただけます。
また、vCenter Converter のサポートはインシデント単位で購入することが可能です。現時点では英語対応でのサポート提供となります。
実際に本番環境にてご利用いただく際は事前検証を実施して頂き、お客様環境での動作確認を行った上での利用を推奨いたします。製品ドキュメントやKnowledge Base およびコミュニティネットワークの情報も活用ください。
P2V / V2V / V2Cとは?
vCenter Converterが対応している仮想マシン移行には、P2V、V2V、V2Cの大きく3つの形態があります。
- P2Vとは Physical to Virtual の略で、既存の物理サーバを専用のツールを使って仮想環境上に移行することを指します。物理サーバディスクのバックアップを取得し、異なるハードウェア構成の新しい仮想マシン上にリストアするイメージです。
- V2Vとは Virtual to Virtual の略で、仮想化プラットフォーム間で仮想マシンを移行することを指します。vCenter Converterは、Hostedタイプのワークステーション製品 (VMware Workstation、VMware Fusion および VMware Player) とvSphere製品間でのV2Vをサポートしています。
- V2CとはVirtual to Cloudの略で、オンプレミスのvSphere環境上で稼働している仮想マシンをクラウドへ移行することを指します。
vCenter Converterの基本操作例
vCenter Converterはどのような手順で利用できるのか。実際の画面を参照しながら基本的な操作を紹介します。
vCenter Converterインストール
- vCenter Converter製品ページ(http://www.vmware.com/products/converter/)から最新版のvCenter Converterをダウンロードして実行ファイルを実行。以降、インストールウィザードに沿って導入作業を進めます。
なお、インターネット接続ができない端末ではサービスが起動しないため、追加手順が必要となります。下記のリリースノートを参照して手順を実施の上、Windowsレジストリキーを追加して再起動し、Converter 関連サービスが起動することを確認してください。 - デスクトップ上に作成されたショートカットを実行してログインし、コンソール画面が起動すれば準備完了です。
オンラインのWindows をローカルからマイグレーション
- vCenter Converter Standalone をインストールします。Setup Typeでは「Local installation」を選択します。
- VMware vCenter Converter Standalone を起動して「Convert machine」を選択します。
- 転送元(Source System)情報を入力します。ここではvCenter Converter がインストールされたWindowsサーバを転送することを想定し、Select source typeを「Powered on」として「This local machine」を選択します。
- 移行先のvCenter 情報(vCenter Server のIPアドレス、ユーザー名、パスワード)を入力します。
- 移行先のvCenter Server に登録する仮想マシン名と保存先フォルダ、マイグレーション先のESXiホストを選択し、仮想マシンの設定変更を行う場合は同時に設定を行います。
- 設定内容を確認し、設定した内容が正しいことを確認できたら移行作業を開始します。
- マイグレーションが完了したら、vCenter にログインして仮想マシンの登録があるか確認し、ゲストOSが起動することを確認します。
オフラインのゲストOSをESXiからマイグレーション
- vCenter Converter を起動して「Convert machine」を選択します。
- 「Source System」にてコンバートしたいシステムの情報を入力します。
Select source typeで「Powered off」として「VMware Infrastructure virtual machine」を選択。その後、仮想マシンの移行元となるESXiのFQDNL(IPアドレス) / User Name / Password を入力します。
- 移行先する仮想マシンを選択します。
- 移行先のESXiのFQDNL(IPアドレス) / User Name / Password を入力します。
- 移行先のvCenter Serverに登録する仮想マシン名と保存先フォルダ、マイグレーション先のESXiホストを選択し、仮想マシンの設定変更を行う場合は同時に設定を行います。
- 設定内容を確認し、設定した内容が正しいことを確認できたら移行作業を開始します。
- マイグレーションが完了したら、vCenter にログインして仮想マシンの登録があるか確認し、ゲストOSが起動することを確認します。
ここまで紹介してきた「vCenter Converterインストール」、「オンラインのWindows をローカルからマイグレーション」、「オフラインのゲストOSをESXi からマイグレーション」の3つの移行の詳しい手順については、下記の動画アーカイブをご参照ください。本動画では、「オンラインのLinux をリモートからマイグレーション」、「オフラインのゲストOS をHyper-V からマイグレーション」に関する手順についても、あわせて詳しい解説を行っています。
【ビデオ】 vSphere / vSAN オンラインセミナー#60 帰ってきた VMware vCenter Converter!! 改めて検証してみた
VMware vCenter Converter 6.3 が改めて正式リリースされました。改めて VMware vCenter Converter を使って他の仮想化基盤から仮想マシンを移行できるのかを改めて検証してみましたので、検証結果を共有させていただきます。
まとめ
今回はvCenter Converterを用いた新基盤への移行にフォーカスし、基本的な手順をご紹介してきました。しかし仮想環境の移行手段には、さまざまな選択肢があります。
基盤移行に際して発生する導入作業や教育費用、以降工数、運用プロセス変更、開発コストなどを事前にしっかり検討し、条件に応じた最適な方法を採用することが重要です。