課題を解決

マルチクラウド時代のワークロードプラットフォーム
満を持して登場したVMware vSphere 8の最新情報

2023/03/22

2022年8月に米国で開催されたVMware Explore 2022にてVMware vSphere 8が発表されました。今回のバージョンアップでどんな強化が図られたのか。歴代のvSphereをご利用の⽅にこそ知ってほしいvSphere 8の新機能を4つのポイントでご紹介します。


目次


アップデート 1 – オンプレミスでクラウドの恩恵を受ける

オンプレミスのvSphereをクラウドライクに使う

vSphere 8は、オンプレミスのvSphereのサブスクリプション化を発表しました。これにより複数拠点で運用しているオンプレミスのvSphere環境を、VMware Cloud Consoleから⼀元管理することが可能となります。

各拠点にVMware vCenter Cloud Gatewayを設置するだけで、管理者は物理的なロケーションを意識することなく複数拠点のVMware vSphere環境を管理できます。

なおVMware Cloud Consoleからは、VMware Aria Automation(旧製品名VMware vRealize Automation)やVMware Cloud on AWSをはじめ、VMwareが提供している多様なクラウドサービスとの容易な連携が可能です。

サブスクリプション型ライセンス「VMware vSphere+」

vSphere 8には、従来どおりのCPU単位の永続(Perpetual)ライセンスも用意されていますが、サブスクリプションで利用する場合はVMware vSphere+ライセンスを選択します。vSphere+は「Standard 」と「Enterprise Plus」の2種類のエディションを選択することができます。1CPUあたり最小16コアからコア単位で購入が可能です。最小16コアから、コア単位での購入が可能です。

アップデート 2 – ワークロードパフォーマンスの向上

DPUに対応したvSphere Distributed Services Engine

現在のSDDC(Software Defined Data Center)環境を支えるハイパーバイザー上ではvSphereのほかVMware vSANやVMware NSXが相乗りして動作しており、オーバーヘッドが高まっています。特にNSXは論理スイッチ、分散ルーター、分散ファイアウォールなど、通信時に重い処理が発生します。

そこで vSphere 8で追加されたのがvSphere Distributed Services Engineという機能で、NSXのネットワークサービスやセキュリティに関する処理を専用ハードウェアのDPU(Data Processing Unit)にオフロードすることでCPUの負荷を軽減します。なお、DPUはホストサーバのPCIeスロットに装着します。

AI/ML⽤ハードウェアアクセラレータの統合管理

vSphere 8は、AI(人工知能)/ML(機械学習)などの用途で使われるGPUやNICを論理的なデバイスグループに統合します。これらのデバイスに対して、VM(仮想マシン)はあたかも単一のユニットであるかのように透過的にアクセスすることが可能となり、パフォーマンスが向上します。

vSphere 7.0でDynamic DirectPath I/Oという機能が搭載され、PCIeに搭載されたデバイスをVMからパススルーで利用することが可能となりました。AI/ML⽤ハードウェアアクセラレータの統合管理は、この機能をさらに進化させたものです。

仮想ハードウェアバージョン20への進化

vSphere 8では、仮想ハードウェアのバージョンが20にアップデートされました。これにより次のようなメリットを得られます。

1点目として、VMデプロイ時のVirtual TPMデバイスの扱いが変わります。従来Virtual TPMデバイスを使用している場合、VMと別々にエクスポートする必要がありました。これに対してvSphere 8では、VMとVirtual TPMデバイスをOVFにまとめてエクスポートすることが可能となりました。たとえばWindows 11への大規模なリプレイスを行う場合でも作業が大幅に簡素化されます。

2点目として、VMware vSphere vMotionを使ったアプリケーション移⾏時の準備が可能となります。VoIPやクラスタ化されたアプリケーションなどvSphere vMotion時の急な停止を許容できないケースがありますが、vSphere 8では移行の実施を事前に通知することが可能で、アプリケーションの利用側は移行に備えた時間を確保することができます。

3点目として、レイテンシーに敏感なワークロードのパフォーマンスを最⼤化します。たとえばvGPUを利用する際に、任意のコアのスレッドを指定することができます。

4点目として、仮想NUMA(共有メモリー型マルチプロセッシング)の構成を簡略化します。仮想NUMAのトポロジーと構成がVMware vSphere Clientに可視化され、VMの新規作成時に最適なリソース設定を行うことができます。

5点目として、vSphereとゲストOS間でのAPIによるデータ共有が可能となりました。データはVM自身の情報として保持されるため、vSphere vMotionを行った場合でもそのまま利用することができます。

アップデート 3 – 業務効率の向上

ライフサイクル管理の強化

従来のvSphereでは、VMware ESXiホストやVM、パッチなどの管理をVMware vSphere Update Managerで行っていましたが、vSphere 7.0でVMware vSphere Lifecycle Managerに置き換わり、vSphere 8によりその機能がさらに便利になりました。機能強化のポイントは、次のとおりです。

1点目は、ステージング機能の搭載です。ESXi ホストにパッチや拡張機能をステージングすると、すぐに適用されずにホストにダウンロードされます。これによりメンテナンスモードを必要とせず、より安定したアップデートを行うことができます。

2点目は、パラレルレメディエーションの実現です。複数のホストに対して同時並行で一気に修復(レメディエーション)をかけることができます。

3点目は、VMware vCenterのリカバリー強化です。クラスタの状態を分散Key-ValueストアとしてESXiホストで持続することで、クラッシュしたvCenterをデータ損失することなく復元します。

4点目は、VMware vSphere Configuration Profilesの搭載です。VMを稼働させるクラスタ上のすべてのホストに対して標準的なコンフィグレーション(希望状態モデル)を適用します。また、アップデートなどにより設定に差異が生じた場合は、その時点で望ましい状態に戻すための修正を施します。

なお、vSphere 8でも従来からのvSphere Update Managerを利用することができますが、今回が最終リリースとなります。したがって、できるだけ早期にvSphere Lifecycle Managerに利用の軸足を移すことをおすすめします。

リソース管理の強化

vSphere 8ではvSphere Memory Monitoring and Remediation v2(vMMR2)というメモリモニタリングの機能が搭載され、たとえばキャッシュのヒットミスなどのメトリックを管理することが可能となりました。これによりVMware vSphere Distributed Resource Scheduler(vSphere DRS)を利用したVMの自動的な配置変更/ロードバランシングなど、仮想化インフラ全体のリソースのより精緻な調整を行うことができます。

ユースケースとして挙げられるのは、データセンター脱炭素化(カーボンニュートラル)への対応です。vSphere 8では仮想化インフラの消費電⼒の内訳をVMやシステム単位の統計情報として収集することが可能で、これと連動させた形でvSphere DRSの最適運用を行うことができます。我が国におけるデータセンターの電⼒消費量は、⽇本全体の電⼒消費量の約1〜2%以上とも推計されているだけに、正確なモニタリングに基づいたリソース管理による電力消費量(=CO2排出量)の削減が急がれます。

アップデート 4 – DevOpsチームのイノベーションを加速

VMware vSphere with Tanzuの強化

従来のアプリケーションの開発フローでは、開発環境やテスト環境では正しく動作していたにもかかわらず、ステージング環境や本番環境にデプロイすると、正常に動かないことがよく起こります。アプリケーションを実行する環境が、開発、テスト、ステージング、本番のそれぞれで異なることがその原因です。

コンテナ技術は、アプリケーションの実行に必要なライブラリや設定ファイルなどをひとまとめにした、ハードウェアやOSに依存しない完全に独立した環境(Dockerイメージ)をビルドし、Kubernetesと呼ばれる共通のコンテナエンジン上で動作させることで、この課題を解決します。

ただしオープンソースであるKubernetesは十分なサポートが得られないため、エンタープライズITのインフラとしてそのまま利用するのは困難です。

そこでvSphere 7.0から提供しているのがVMware vSphere with Tanzuという製品で、vSphere上で商用ベースのサポートを受けられるKubernetesの運用を実現します。vSphere 8ではこの機能がさらに強化され、VMware Tanzu Kubernetes Grid 2.0というシングルKubernetesランタイムを搭載しました。

まとめ

ここまで述べてきたようにvSphere 8 は、オンプレミスのワークロードにクラウドの利点をもたらします。また、DPUやGPUといったハードウェアとの連携によってワークロードのパフォーマンスを向上させます。さらにKubernetesランタイムによって今後のDevOpsを見据えたイノベーションを加速するなど、エンタープライズに向けて最適なワークロードプラットフォームを提供します。


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