国内の主要4拠点にVMware SD-WANを導入し、
ネットワークのキャパシティを従来比で3倍に強化。
テレワークにおける約9,000人の社員の生産性も向上
独立系の大手SIerであるTISインテックグループの中核企業として、生活インフラから産業・公共サービスまで、幅広い社会基盤をITで支え続けるTIS株式会社。同社は2021年3月に東京都内の複数拠点を豊洲の新オフィスに集約するにあたり、豊洲、西新宿、大阪、名古屋の4つの主要拠点にVMware SD-WANを導入。データセンターを介さず各拠点からインターネットに直接アクセスするローカルブレイクアウト(LBO)の機能によって、テレワーク環境下においても安定したインターネット接続が実現し、約9,000人の社員の業務生産性が向上しています。
導入前の課題
- テレワークの拡大によるネットワーク環境の慢性的な逼迫
- オンライン会議における音声品質、画像転送品質などの低下
- データセンター集約型のネットワーク構成におけるゲートウェイ機器の負荷
導入効果
- 高度な拡張性と運用性を備えたネットワーク環境
- テレワークにおける約9,000人の社員の業務生産性の向上
- ネットワークのキャパシティが3倍に向上
コロナ禍におけるテレワークの急増で社内ネットワークの輻輳が慢性化
グループ内の事業シナジーの強化、働き方改革の推進、コミュニケーションの活性化に積極的に取り組むTISでは、その施策の一環として東京地区の複数のオフィスを豊洲に集約し、2021年3月から豊洲と西新宿本社の2拠点体制へと移行しています。豊洲の新オフィスではフリーアドレス制が採用され、多くの社員が新たな働き方にチャレンジしていますが、この移転に際して浮上した課題の1つが既存のネットワーク環境の見直しでした。その大きなきっかけとなったのが、コロナ禍によるテレワークの急増です。
同社では2019年にMicrosoft 365を全社導入し、多くの会議がMicrosoft Teamsを使ってオンライン上で行われるなど、テレワークの文化が根付き始めたていたものの、コロナ禍以降はインターネット経由でこれらのサービスを利用するユーザーが急増した結果、回線が逼迫する状況が慢性化していました。管理本部 情報システム部 主査の佐藤雄弥氏は次のように話します。
「当社が運用してきたデータセンター集約型のネットワーク構成では、すべてのユーザーは東京と大阪の2カ所のデータセンターを経由してインターネットにアクセスします。この環境では、急激にアクセスが増えても簡単に回線を増速することができず、オンライン会議でカメラをオフにしてもらうなど、社員に不便を強いることになっていました」
一方、社外で仕事をする社員は、従来から画面転送型のリモートデスクトップシステムを利用して社内ネットワークにアクセスしています。テレワークに切り替えた社員が増えた結果、リモートデスクトップシステムにアクセスする通信量も増加し、オンライン会議をする際には、画面共有はPCで、音声は携帯電話でと利便性が低下し、気軽に会議をセットすることもできなくなっていました。
「議論の結果、社内ネットワークの入口と出口の両方が輻輳する状況は、豊洲の新オフィスに移転する前に解決しなければならない最優先の課題となりました。10年以上前に設計した社内ネットワークも複雑化していたことから、これを機にネットワーク環境の根本的な見直しに着手しました」(佐藤氏)
クラウド上のゲートウェイサービスを評価しVMware SD-WANの採用を決定
次期ネットワークの要件を、ユーザー目線のネットワーク構築、高度な拡張性と運用性、コストの最適化の3つとしたTISは、その解決策としてSD-WANに着目し、VMware SD-WANの採用を決定しました。選定の理由について、IT基盤技術事業部 IT基盤コンサルティング部 エキスパートの野口敏久氏は次のように振り返ります。
「一番の評価ポイントは、クラウド上のゲートウェイサービスであるVMware SD-WAN Gatewayによって、高い次元でのSD-WAN運用が可能になる点です。SASEなどのクラウドサービスを導入する際の設定も簡単で、Amazon Web Servicesなどのクラウド基盤とも柔軟に連携することができます。今後の拠点拡大やビジネスのアジリティを考慮するなら、VMware SD-WAN以外の選択肢はありませんでした」
導入プロジェクトでは、2020年9月~11月の3カ月でPoCを実施した後、まず2021年1月~4月のフェーズ1で豊洲と大阪の2拠点への導入を行いました。その後、2021年7月~9月のフェーズ2で西新宿本社と名古屋の2拠点に展開。豊洲と大阪はLBOによるインターネット環境の構築と同時に、商用ビルである豊洲が計画停電などでダウンしても、自動的に社内向けのルートを大阪側に切り替えられる冗長構成としました。
「プロジェクトの必須の要件は、既存のネットワーク(MLPS)には極力手を加えることなく、なおかつ止めずに導入を行うことでした。そのため、豊洲への導入前は小規模のパイロット環境で不具合を洗い出し、展開時も部門単位、フロア単位で区切りながら慎重に進めました」(野口氏)
VMware SD-WANの導入は同社にとって初めての経験ということもあり、いくつかの非機能要件にも直面しました。IT基盤技術事業部 IT基盤コンサルティング部 主任補の畑浦勇人氏は次のように話します。
「LBOを行う際に特定のアプリで問題が出たり、名前解決のためにDNSの見直しが発生したりしました。拠点ごとに設定の違いもあり、細かなトラブルシューティングも発生しましたが、1つ1つ解決しながら乗り切ることができました。この過程では、VMwareテクニカルチームによるさまざまな支援も受けました。PoCの段階では机上ベースで導入時のアドバイスを受け、また本番環境の構築では、テクニカルサポートサービス(TSS)からパラメーター設定などに関するアドバイスを受けながら課題をクリアしていきました」
図:VMware SD-WAN導入前後のネットワーク構成
音声品質や画面転送品質が向上し快適なオンライン会議が実現
VMware SD-WANの導入後、社員はLBOによってインターネットを経由してTeams、Zoom、リモートデスクトップなどを利用できるようになっています。当初の計画では、LBOは新規で導入するゼロトラストPCだけを対象とする予定でしたが、ユーザーの要望を受けて既存のノートPC(FAT端末)にも対象を拡大し、主要4拠点の約9,000人の社員が利用することになりました。
「LBOによってオンライン会議での音声品質や画面転送品質が向上し、社員の業務生産性は確実に高まっています。現在、豊洲だけでも400MbpsのトラフィックがSD-WAN側に流れており、その分だけ社内ネットワークの負荷が軽減されたことになります」(佐藤氏)
また、ネットワークの可視化によってアプリ単位でトラフィックを把握できるようになり、無駄のない拡張や課題の早期解決が可能になった点も大きな成果です。
「ダッシュボード上でTeamsやZoomがどの時間帯に、どれだけ利用されているかといったことを把握し、オンデマンドでの回線追加が迅速にできるようになりました」(野口氏)
これは可視化やLBOだけでなく、VMware SD-WANのもう1つの大きな特長である、複数の異なるWAN回線を仮想的に1本の回線として利用するDynamic Multi-Path Optimization(DMPO)や、通信ルートを最適化するVMware SD-WAN Gatewayも相乗的に機能したことによるもので、通信の用途ごとに帯域保証やベストエフォートの回線を使い分けたトラフィックの最適化やネットワーク品質の向上につながっています。さらに、今後はVMware SD-WAN Orchestratorやゼロタッチプロビジョニングによって、保守対応などの運用負荷軽減も期待できます。
「VMware SD-WANの各種機能により、社内で利用できるネットワークのキャパシティは従来比の3倍となり、ネットワーク拡張のアジリティもオンプレミス環境と比べて5倍に高めることができました」(野口氏)
図:アプリケーション単位、IPアドレス単位でトラフィックを分析
LBOの対象アプリの拡大しながら将来的に社内ネットワークの廃止も検討
TISの国内拠点の中には、VMware SD-WANがまだ導入されていない拠点も残っています。今後は小規模拠点のネットワークを見直しながら、必要に応じてSD-WAN化していく予定です。導入済みの4拠点についても、LBOの対象アプリの拡大を検討中で、現在はファイルサーバーのBoxなどが候補となっています。
「ユーザーから寄せられるLBOの要望に関しては、その都度検証しながら対応を準備していきます。基本的に全社で利用するクラウドサービスやアプリは、LBO化して社内ネットワークのトラフィックを削減していく考えです」(畑浦氏)
さらに同社では、将来的に社内ネットワークを廃止する構想も描いています。
「設備に依存するネットワーク環境は廃止して、インターネットとクラウドサービスの利用を標準モデルとすることで、社内でもテレワークでも、あらゆるデバイスを使って自由に働ける環境を提供することが目標です。その基盤となるVMware SD-WANには、さらなる進化を期待しています」(佐藤氏)
VMware SD-WANの自社導入によって蓄積された技術とノウハウは今後、TISのITサービスとしても多くの企業に新たな価値を提供していくことになるはずです。
プロジェクトメンバー
TIS株式会社
IT基盤技術事業本部
IT基盤技術事業部
IT基盤コンサルティング部 エキスパート
野口 敏久 氏
TIS株式会社
管理本部
情報システム部 主査
佐藤 雄弥 氏
TIS株式会社
IT基盤技術事業本部
IT基盤技術事業部
IT基盤コンサルティング部 主任補
畑浦 勇人 氏
お客様情報
お客様名 | TIS株式会社 |
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WEBサイト | https://www.tis.co.jp/ |
カスタマープロフィール | 独立系の大手SIerであるTISインテックグループの中核企業として、基幹システムから各種アプリケーション、ネットワークまで、幅広い分野でITサービスを提供。中期経営計画(2021-2023)では、先進技術・ノウハウを駆使したビジネスの革新と市場創造に向けた「グループビジョン2026」を掲げ、DXの支援を通じた社会課題の解決を目指している。 |
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※本記載内容は2023年1月現在のものです。