課題を解決

次世代ハードウェアに対応したVMware vSAN 8の最新情報
VMwareが提供するHCIのコアテクノロジー

2023/02/22

2022年第3四半期の世界のHCI(ハイパーコンバージドインフラ)市場において、VMwareベースのHCIは市場シェア(金額)40.76%を占めており、前年同期比7.87%の成長を記録しました。そのコアとなっているのがVMware vSANであり、導入企業数は世界で3万2000社以上に広がっています。最新バージョンとして2022年10月にリリースされたVMware vSAN 8で実装された新アーキテクチャ、およびVMware vSAN 6.7以降のバージョンアップを経て強化された機能を紹介します。


目次


マルチクラウド戦略に沿ったCloud Smartの価値を提供
―VMware vSAN 8で実装された新アーキテクチャ-

クラウド化の恩恵をオンプレミスにもたらすVMwareのビジョン

オンプレミスにおけるストレージ仮想化機能として2014年に登場したVMware vSANは、その後のエンタープライズ企業におけるクラウド変革の流れに対応、HCI のスタンダードとして採用が広がっています。Cloud FirstからCloud Chaosを経た企業のクラウドージャーニーに対応し、現在では「任意のアプリの適切なクラウドでの運用」、「セキュリティと制御による一貫した管理」、「プライベートクラウドとパブリッククラウドのコスト効率の良い運用」など、Cloud Smartの価値を提供するソリューションへと進化を支えています。

最新バージョンとしてリリースされたVMware vSAN 8は、クラウド化の恩恵をオンプレミスのビジネスクリティカルなワークロードにも提供します。

NVMeを前提とした高速・低遅延のストレージアーキテクチャ

VMware vSAN 8ではESA(Express Storage Architecture)という新たなストレージアーキテクチャが採用され、従来の2層方式であるOriginal Storage Architecture(OSA)または新アーキテクチャ(ESA)を選択可能となりました。ESAは大きく2つの特徴をもっています。

まずは、特許取得済みの新しいログ構造ファイルシステムです。I/O の重複を削減し、デバイスに対する負荷を最小限に抑制することで、CPUのオーバーヘッドを低減します。加えて従来よりも高性能なスナップショットの機能も搭載されました。

次に、最新のフラッシュデバイスに対応したI/Oエンジンです。従来のSAS/SATA接続によるSSDはI/Oの並列処理が困難でしたが、ESAのI/OエンジンはNVMe接続のフラッシュデバイスの特性を生かした並列処理をサポートします。

従来のように2Tier構造でキャッシュデバイスとキャパシティデバイスに分けてI/Oを処理するのではなく、シングルTier構造で同一のフラッシュデバイスにキャッシュとキャパシティの両方の役割を持たせることができるなど、高効率な並列処理により高帯域かつ低遅延のデータアクセスを実現します。また、フラッシュデバイス全体を一貫したシンプルなサイジングと拡張が可能となります。

ESAで得られる3つのメリット

最新ハードウェアに対応したアーキテクチャを生かし、ESAは次の3つのメリットを提供します。

1. パフォーマンスと容量効率性の両立

これまでのVMware vSANでは、パフォーマンスを求めるとミラーリング(RAID1)しか選択の余地がなく、FTT(Failure to Tolerate:許容するホストの障害数)を増やすと容量がかさんでしまう。一方で容量効率性を求めてRAID 5/6を選択するとパフォーマンスが落ちるというジレンマがありました。

これに対してVMware vSAN 8のESAのもとでは迷わずRAID 5/6を選択し、パフォーマンスと容量効率性を両立することができます。また、ESAでは新たな圧縮や暗号化の仕組みが搭載されており、容量効率性をさらに向上することができます。

2. 可用性とサービス性の向上

前述したシングルTier構造のI/Oエンジンにより、ディスクグループを設けたり、キャッシュとキャパシティを区別したりする必要がなくなります。これによりフラッシュデバイス単位での運用管理を簡素化し、障害発生時に特定しなければならない影響範囲を極小化します。

3. VMware vSANであること

アーキテクチャがESAに変わっても、運用が大きく変わるわけではありません。

ESAはこれまでのVMware vSANをベースとして最新ハードウェアに最適化させたものです。ESXiカーネルに組み込まれたストレージ機能として、VMware vSphere環境のワークロードにストレージを提供する仕組みや、仮想マシンを中心したストレージポリシー管理の考え方などは、そのままVMware vSAN 8にも継承されています。

ストレージ機能面におけるVMware vSANの進化
―VMware vSAN 6.7からVMware vSAN 8に至り強化された機能-

データサービスの拡張

VMware vSANではデータサービスが強化され、次の3つの機能が搭載されました。

1.  HCI Mesh

単一のVMware vCenter配下の複数のvSANクラスタ間で、vSANデータストアの共有を可能とする機能です。コンピュートとストレージリソースを分けて仮想マシンのプロビジョニングが可能となるなど、ストレージリソースの効率的な活用を実現します。

2. 暗号化

vSANクラスタごとのデータサービス設定により、保存データの暗号化(データストアのオブジェクトを暗号化)および転送データの暗号化(ホスト間のvSAN トラフィックの暗号化)を行うことができます。

なお暗号化は、VMware vSAN 8の他のすべての機能と併用することが可能です。

3. ファイルサービス

VMware vSAN 8はSMB v2.1 / v3およびNFS v3 / v4.1に対応しており、vSANデータストアに仮想マシンがアクセスできる共有ファイルを作成することができます。SMBプロトコルでのアクセス時にはActive Directory 連携、NFSプロトコルでのアクセス時にはKerberos 認証を行います。

vSANクラスタあたり100個のファイル共有をサポートしており、健全性チェックや容量ビューといった新機能もあわせて提供します。

vSphere Lifecycle Managerによるライフサイクル管理

VMware vSANの安定した運用を行っていくためには、初期構築を終えたあともハードウェアとソフトウェア双方のアップデート、ハードウェア健全性やパフォーマンスの監視、メンテナンスを継続して実施しなければなりません。
このライフサイクルの中でvSphere Lifecycle Managerは、vSANクラスタ全体の容易なパッチ運用やアップグレードをサポート。ハードウェア(ファームウェア、ドライバ、BIOS、NIC)、サードパーティのアドオン、仮想マシンのハードウェアバージョン、VMware Toolsまで一括した管理を実現します。

さらにVMware vSANの管理インターフェースとして強化されたvSphere vCenter Client が、上記のvSphere Lifecycle Managerをはじめ、初期設定を担うQuickstart、健全性管理を担うVMware Skyline Healthや VMware Aria Operations(旧 vRealize Operations)といったツールと連携。デプロイからアップデート、オペレーションまで一貫したVMware vSANの管理を実現します。

仮想マシンはもちろん幅広いワークロードへの対応

VMware vSANの歴史を振り返ると、2015年に登場したVMware vSAN 6でオールフラッシュデバイスを用いた共有ストレージを実現するストレージ仮想化を実現し、2018年のVMware vSAN 6.7で幅広いベンダーの汎用的なサーバに対応。2020年のVMware vSAN 7でコンテナを含めたワークロードへの対応の幅を広げてきました。

そして2022年のVMware vSAN 8は新アーキテクチャのESAにより最新ハードウェアへの対応を進めるとともに、拡張されたワークロードをさらに強化することでマルチクラウドコンピューティングのインフラへと進化しました。

実際にVMware vSANは、いまや主要なクラウドサービスのインフラとしても採用されています。その意味でもお客様のあらゆるワークロードが、VMware vSANで稼働する時代になったといって過言ではありません。

まとめ ―VMware vSANが提供するリアルなビジネス価値-

VMware vSANをご利用いただいているお客様のさまざまな公開事例を分析したところ、プラス評価をいただいた項目として、「導入・運用負荷軽減」「パフォーマンス向上」「安定性向上」「リソース効率向上」「拡張性向上」「内製化・外注適正化」「BCP(業務継続性計画)強化」「ベンダーロックイン軽減」といった8つのリアルなビジネス価値をもたらしていることが明らかになりました。

この8つのビジネス価値は、インフラの導入・運用のすべてのフェーズにおいて効果を発揮します。単に拡張性だけにとどまらない新機能の実装や機能強化を行ったVMware vSAN 8の効果を、ぜひ皆様の環境でも実感してください。

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