約140台の仮想マシンが稼働するvSphere環境を
ハイブリッド構成の新基盤に移行して運用負荷を軽減
美容室専用の化粧品メーカーである株式会社ミルボン(以下、ミルボン)は、これまでオンプレミスのVMware vSphere環境で運用してきた基幹システムを含めた約140台の仮想マシンを、オンプレミスのvSphere 環境とVMware Cloud on AWS、AWSのネイティブサービスを適材適所で組み合わせたハイブリッド構成の新基盤に移行しました。これによりハードウェア障害に対応する工数を可能な限りゼロに削減するとともに、業務継続性も大幅に向上しています。
導入前の課題
- vSphere環境を構成するベアメタルサーバのハードウェアに発生するトラブルに苦慮
- インフラのメンテナンスに費やす工数が年々増加
- ベアメタルサーバの保守期間が切れる5年に1度の更改時期が到来
導入効果
- 仮想化基盤部分の運用管理をアウトソースして、ITインフラ部門は本来の業務に専念
- ハードウェア障害に対応する工数を可能な限りゼロに削減
- VMware Cloud on AWS上でノード障害が発生した場合も自動復旧して業務継続
「ユーザーが何も気にせずに使い続けることができるのが、ITインフラとしての理想であり、VMware Cloud on AWSを中心とした今回のハイブリッド構成の新基盤により、その姿をほぼ実現することができました」
株式会社ミルボン 情報企画部 部長 畠中 健二氏
プロジェクトメンバー
ベアメタルサーバのメンテナンス工数が増加
ミルボンは、美容室専用のヘアケア製品やヘアカラー剤などを製造・販売する化粧品メーカーです。国内はもとより14 の国と地域に拠点を展開。日本、韓国、中華圏、ASEAN、北米、EU、中東の7つのリージョンごとの研究開発・生産・物流・販売・人材体制を構築することで、髪質や文化、価値観の違いに対応し、地域の美容産業の発展に貢献していこうとしています。
このグローバルな事業展開を支えているのがIT戦略です。2005年頃からVMware vSphereを活用した仮想化に取り組み、2012年からは各種SaaSを含めたクラウドサービスも積極的に活用してきました。
同社 情報企画部 部長の畠中 健二氏は、「会社全体としてクラウドを優先的に活用していく方針を打ち出しています」と話します。
そうした中、2022年7月から約1年間にわたって取り組んだのが、オンプレミスのデータセンターで運用してきたvSphere環境のクラウド移行です。同社 情報企画部 ITインフラ室 マネージャーの岡﨑 鉄夫氏は、その概要を次のように説明します。
「移行対象となったのは4ノード構成のVMware vSANを用いたインフラ上で稼働させてきた、基幹システムやActive Directoryサーバを含む約140台の仮想マシンです。長年の運用を通じてvSphere環境を熟知していたためソフトウェア面での問題は特になかったのですが、時々起こるハードウェアのトラブルに苦慮しており、メンテナンスに費やす工数も増加傾向にありました。そこでベアメタルサーバの保守期間が切れる5年に1度の更改時期にあわせて、クラウド移行を検討しました」と説明します。
オンプレミス to オンプレミスの移行も選択肢の1つにありましたが、「クラウドならではの明確になる責任分界点を重視し、仮想化基盤部分の運用管理をアウトソースすることで私たちは本来の業務に専念したいと考えました」と畠中氏は強調します。
オンプレミスのvSphere環境と同じアーキテクチャを採用した
VMware Cloud on AWSを選定
では、どのクラウドへ移行するのが最適なのか。ミルボンが注目したのが、VMwareから提案されたVMware Cloudです。
「VMware Cloudに興味を持ったのは、オンプレミスのvSphere環境と同じアーキテクチャを採用していることです。ITインフラ室では少人数で多くのシステムの運用管理を担っており、メンバーに新たな負担を背負わせたくないという思いがあり、既存のvSphere資産をそのままクラウドに継承して利用できることが決め手となりました。IPアドレスを変更することなく仮想マシンを移行できる点も重視しました」(岡﨑氏)
そして複数あるVMware Cloud の中で選択したのがVMware Cloud on AWS です。「弊社はすでに一部業務でAmazon Web Services(AWS)を利用しており、そのネイティブサービスとの親和性の高さを考慮しました」(岡﨑氏)
上記の方針のもと、ミルボンはVMware Cloud on AWS(4ノード構成)とオンプレミス側のvSphere 環境(vSAN3ノード構成)を組み合わせたハイブリッド構成による新基盤の基本仕様を策定しました。なお、これまで同社はAWSの東京リージョンを利用してきたのですが、新基盤では大阪リージョンを選択しています。
「移行対象には生産系のシステムも含まれており、近隣の三重県にある工場から低遅延でアクセスできることに加え、万一VMware Cloud on AWSに重大な問題が発生した場合でも工場の操業を止めないための対策を打ちやすいといった観点から、今回は大阪リージョンを採用することになりました」(畠中氏)
短期間での移行を実現したプロジェクトの成功要因
ハイブリッド構成を採用した新基盤への移行は、2023年4月から5月にかけて実施されました。このうちVMware Cloud on AWS環境に移行した仮想マシンは約60台で、残りの約80台はオンプレミスに新たに構築したvSphere環境に移行しています。
ライセンス上の制約があるシステムや、高いレスポンスが重視される工場のMES(製造実行システム)、リモートデスクトップ環境など、そのままクラウドに持っていくのが困難なシステムをオンプレミスに残した形です。この2つの基盤をL2延伸することで、シームレスな運用を目指しました。
もっとも実際の移行作業には、多くの苦労が伴いました。
「業務に与える影響を最小限に抑えるため、特に製造や販売、物流部門が利用するサーバをスムーズに移行しなければなりません。関連部門とも綿密な調整を行った上で、5月の大型連休期間の決められた日程で確実に作業を完了しなければなりませんでした」と話すのは、同社 情報企画部 ITインフラ室 サブマネージャーの濱田 充氏です。
同社 情報企画部 ITインフラ室 ジュニアアソシエイトの岡波 達矢氏も、「単にサーバを移行するだけでなくその後の検証もしっかり行う必要があり、どうしても1日あたりで移行できるサーバの数は限られてしまいます。したがって入念な計画とスケジュール管理が不可欠でした」と話します。
そこでいくつかある選択肢の中から採用したのが、ヴィーム・ソフトウェア社「Veeam Data Platform」のレプリケーション機能を利用する方法です。
「弊社のシステムや業務を熟知している長年のSIパートナーである富士ソフトの支援のもと、マニュアルを“ミルボン流”の言葉に書き換えたわかりやすい手順書の作成や、現場の業務部門も巻き込んだ段取り決めなど、事前準備をしっかり行ったことが成功要因です」(岡﨑氏)
同社 情報企画部 ITインフラ室 アソシエイトの原 啓氏も、「移行作業を短期間で実現できた背景には、富士ソフトをはじめとする多くのベンダーが、それぞれ得意とする技術や知識を惜しまず提供し、私たちをサポートしてくれた貢献がありました」と話します。
ハイブリッド構成ならではの効果的な運用を実現
2023年5月の大型連休明けから稼働を開始した新基盤は、VMware Cloud on AWS とAWSのネイティブサービス、そしてオンプレミスのvSphere環境のそれぞれのメリットを組みわせた、ハイブリッド構成ならではの効果的な運用を実現しています。
「富士ソフトからの提案によりVMware Aria Operations for Logsを導入し、VMware Cloud on AWSで発生したイベントを検知して、何かあればすぐにログを確認できる仕組みを作りました。またバックアップに関してはAWSのEC2上にVeeam のレポジトリサーバを立てることで、AWS上のストレージへのデータの高速転送を実現しています」(岡﨑氏)
なお、AWSのネイティブサービスの利用形態としては、Webサーバなど外部公開用のサーバが必要になった際にEC2を利用するほか、これまでオンプレミスで運用してきたファイアウォールなどDMZに置くべきサーバをAWSに移行しています。
「ハイブリッド構成の効果的な運用形態について、VMwareのTAM(Technical Adoption Management)サービスからもさまざまな提案をいただいており、さらなる改善に向けて多くの気づきを得ています」(畠中氏)
こうして新基盤は現在も安定した稼働を続けています。そうした中で、すでに多くの効果があらわれています。
「これまでオンプレミス環境で悩まされてきたハードウェア障害に対応する工数は可能な限りゼロになりました。実は一度だけVMware Cloud on AWS上のノードで障害が起こったことがあるのですが、その際にもシステムは問題なく稼働を続け、さらに自動的に復旧が進んでいく様子を目の当たりにし、VMware Cloud on AWSの高度な業務継続性を実感しました」(岡﨑氏)
ミルボンは「ユーザーが何も気にせずに使い続けることができるのが、ITインフラとしての理想」(畠中氏)とし、その姿をほぼ体現できた今回のハイブリッド構成の新基盤を、少なくとも向こう5年間にわたって利用していく考えです。
その上で引き続きDMZやSQL関連のサーバを順次AWSのネイティブサービスに移行するほか、クライアント環境のDaaS(Desktop as a Service)化も検討するなど、徐々にオンプレミス環境を縮小したマルチクラウド化を目指しています。
プロジェクトメンバーのご紹介
株式会社ミルボン
情報企画部 部長
畠中 健二氏
株式会社ミルボン
情報企画部 ITインフラ室
マネージャー
岡﨑 鉄夫氏
株式会社ミルボン
情報企画部 ITインフラ室
サブマネージャー
濱田 充氏
株式会社ミルボン
情報企画部 ITインフラ室
アソシエイト
原 啓氏
株式会社ミルボン
情報企画部 ITインフラ室
ジュニアアソシエイト
岡波 達矢氏
お客様情報
お客様名 | 株式会社ミルボン |
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WEBサイト | https://www.milbon.com/ja/ |
カスタマープロフィール | 美容室専用のヘアケア製品やヘアカラー剤などを製造・販売する化粧品メーカー。美容のプロフェッショナル人材の育成や課題解決支援を通じて、美容室の成功を支援するとともに、確かな技術に裏付けられた製品によって、美容室を訪れるお客さま一人ひとりの美しい生き方を応援している。 |
導入製品 |
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プロフェッショナルサービス |
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導入パートナー | 富士ソフト株式会社 |
※本文中に記載されている会社名及び商品名は、各社の商標または登録商標です。
※本記載内容は2023年10月現在のものです。