国内外の拠点をつなぐWANインフラを国際IP-VPNからVMware SD-WANにリプレイスし、コスト削減と快適なアプリケーション利用を実現
長年にわたり培ってきた脆性材料の加工技術をベースとする製造装置や工具の開発・製造・販売を主事業とする三星ダイヤモンド工業株式会社は、日本(大阪本社、東日本オフィス、飯田工場、天龍工場)および中国、韓国、台湾の各拠点を結ぶWANを構築し、グローバルなビジネスを推進しています。そこで利用していた国際IP-VPNが契約期限の満了を迎えるのを機に、新たなWANのインフラとしてVMware SD-WANを導入しました。本社を経由していた、海外拠点からAzure、各国内拠点からMicrosoft 365などに直接アクセスできるICT環境のフラット化を実現しました。
導入前の課題
- 高止まりしている通信の運用コスト削減したい
- グローバル全体での事業継続性を強化したい
導入効果
- 拠点間の通信費や機器の保守費、減価償却費などの運用コストを67%削減
- Microsoft 365のパフォーマンスを向上
- 各回線の接続状況や帯域の利用状況などを管理画面にリアルタイムに可視化し、ネットワークの運用管理を改善
尾上 豊 氏
三星ダイヤモンド工業株式会社
管理統括部 経営企画部 ICTグループ
GL代理
俣野 裕爾 氏
三星ダイヤモンド工業株式会社
管理統括部 経営企画部
主幹
高木 大輔 氏
アステック株式会社
ICTソリューションカンパニー
事業戦略室
室長
日本、中国、韓国、台湾を結ぶWANを運用
FPD(フラットパネルディスプレイ)、太陽電池、LED、CMOSイメージセンサー、電子部品など多種多様な脆性材料の切断/割断や穴あけなどの加工技術をコアコンピタンスとする三星ダイヤモンド工業は、そのノウハウを生かした装置や工具の開発・製造・販売からアフターサービスまでトータルソリューションを提供しています。さらに現在ではセキュリティカメラシステムの販売・構築にも事業を広げるほか、グローバル化にも注力し、日本のほか中国、韓国、台湾、ドイツにも拠点を展開しています。
こうした同社のビジネスにとって欠かせないのが、グローバルの各拠点を結ぶネットワークです。三星ダイヤモンド工業 管理統括部 経営企画部 ICTグループ GL代理の尾上豊氏は、「国内外のすべての拠点がグループウェアをはじめとするアプリケーションやデータを共有し、シームレスに連携・連動しながら事業を遂行する情報基盤を整備・強化することが私たちICTグループのミッションです」と話します。
同社は国際IP-VPN網を利用して日本(大阪本社、東日本オフィス、飯田工場)、中国、韓国、台湾を結ぶWANを2016年より構築・運用してきました。
しかしこのWANインフラにも様々な問題が顕在化していました。
まずはコストの問題です。キャリアの閉域網を利用する国際IP-VPNは通信費や設備の保守費などのコストがどうしても高止まりしてしまいます。
加えてパフォーマンスもネックとなりつつありました。三星ダイヤモンド工業 管理統括部 経営企画部 主幹の俣野裕爾氏は、「国際IP-VPNで保証される帯域は最大でも20Mbps程度で、海外拠点では数Mbpsになってしまう場合もあります。WANの運用を開始した当時はそれでも問題がなかったのですが、拠点間の通信量が増大するに伴い帯域が足りなくなるおそれが生じてきました」と話します。
こうして同社は、2021年6月に国際IP-VPNの契約が満了するのを機にWANインフラを刷新すべく、新たなソリューションの検討を開始しました。
回線を最適化するSD-WANに注目
WANインフラの刷新に向けた具体的な目標は、大きく次の3点です。
1点目は前述した国際IP-VPNの課題解決で、通信費や設備費を含めた全体コストを下げつつ、柔軟にパフォーマンスを増強できる基盤を求めました。
2点目は事業継続性の強化です。同社が本社を構える大阪市は2018年に大阪府北部地震や台風21号などの被害を受けたこともあり、現在3か年計画のもと国内外の各拠点にデータを分散配置するBCP強化を進めています。この構想を実現するためにもクラウドと親和性の高いWANインフラが必要となります。
3点目は中国のサイバーセキュリティ法改訂への対応です。本法律の改訂が適用された場合、中国で収集・作成されたデータについては中国国内での保存義務が発生する為、同社での優先順位が高いと判断し対策を行うと決定しました。これらの観点からの検討を経て、同社が導入を決定したのがVMware SD-WANです。
単純にコストダウンを実現するだけなら国際IP-VPNをインターネットVPNにリプレイスするという選択肢がありますが、通信品質や安定性が損なわれるおそれがあります。そこで同社が最初に考えたのがMicrosoft Azureのリージョン間でデータをやりとりするという方法ですが、これも思うようなスピードを得ることができませんでした。こうした調査やテストを進めていった先で行き着いたのが、回線を最適化する最新テクノロジーを備えたSD-WANだったのです。
「様々なベンダーが提供しているSD-WAN製品の中でVMware SD-WANに注目したのは、拠点用SD-WANルーター(VMware SD-WAN Edge)の設定を自動化するゼロタッチプロビジョニングの機能です。コロナ禍により海外拠点への出張は困難なため、短期間でインフラを構築するにはこの仕組みを利用するしかないと考えました」(尾上氏)
また、今回のインフラ構築を初期段階からサポートしてきたアステック ICTソリューションカンパニー 事業戦略室 室長の高木大輔氏は、VMware SD-WANを提案した理由を次のように話します。
「VMware SD-WANで高く評価したのがクラウドとの親和性の高さです。特にお客様が従来から利用してきたMicrosoft Azureに関しては、Azureのルーティングと連携して一部のトラフィックを西日本リージョン経由で別リージョンにルーティングするなど柔軟なルーティングを行うことができました。また、VMware SD-WANではクラウド上のゲートウェイ(VMware SD-WAN Gateway)によって拠点間VPN接続がコントロールされているため、仮に本社社屋の停電や災害発生時でも海外を含めた他拠点間、クラウドへの接続は問題なく通信を維持することができます。これはお客様が課題とするBCP強化を実現する上でも大きなメリットとなります」
なお、今回のWANインフラ刷新の3つめの課題とする中国のサイバーセキュリティ法への対応に関しては、ファイルサーバーをMicrosoft Azureの東アジア(香港)リージョンに移すことで解決を図ることとしました。
現地に機器を送付するだけで作業は半日程度で完了
刷新された同社のWANインフラは、海外を含む各拠点と本社間の通信を最適化するVMware SD-WANと、拠点内LANを担うCisco Meraki L3 スイッチとの組み合わせにより構成されています。
2021年1月から機器の導入を開始。約2か月をかけて既存のIP-VPNとの並行運用を行いつつ、順調に移行が進みました。
「VMware SD-WAN Edgeの海外拠点への展開についても本社からは手順書を添えて機器を送付しただけなのですが、現地の社員はその手順書を見ながら機器の接続や初期設定をしっかり行なってくれました。どの拠点も特に問題はなく半日程度で作業は完了しました。事前のテストや情報提供など、アステックの手厚いサポートのおかげです」(尾上氏)
こうして現在、中国以外の拠点からは SD-WANを通してMicrosoft 365やMicrosoft Azure上のファイルサーバーに直接アクセスすることが可能となりました。
「VMware SD-WANのDMPO(Dynamic Multipath Optimization)という独自技術により、複数のインターネット回線を束ねることで各拠点間及びAzureとの通信品質とパフォーマンスを向上しています。なお、束ねる回線はそれぞれ別キャリアで契約しているため、万が一どれかが停止したとしても通信を継続することが可能です」(高木氏)
通信のコスト削減とパフォーマンス向上を両立
2021年4月に本格的な運用を開始した新しいWANインフラは、すでに多くの成果をもたらしています。何よりも大きいのはコスト削減です。
「VMware SD-WANを導入した結果、拠点間の通信費や機器の保守費、減価償却費などの運用コストを67%削減することができました。それでいながらネットワークの利用環境は従来にも増して非常に快適です。Microsoft 365のパフォーマンスも向上し、例えばTeamsを使ったリモート会議でも従来のような映像や音声の途切れはほとんど起こらず、ユーザーからのクレームもなくなりました」(俣野氏)
一方でネットワークの管理面も大きく改善されています。
「VMware SD-WANの管理画面では、各回線の帯域がどれくらい利用されているのかなどネットワークの状況がリアルタイムに可視化されます。これにより何か問題が起こるたびにキャリアに問い合わせたり、専用ソフトを使ってルーターごとにトラフィックを監視したりしなければならなかった、従来かかっていた手間がなくなり、今後の回線の更新計画も立てやすくなりました。また、実は先日ある回線でトラブルが発生したのですが、VMware SD-WANが自動的に別回線に切り替えてくれたおかげで、拠点側のユーザーはまったく気づくこともなく業務を継続して事なきを得ました。このようにVMware SD-WANはネットワークの可用性向上にも大きく貢献しています」(尾上氏)
「お客様のWANインフラをサポートするSIパートナーの立場からも、VMware SD-WANには大きな導入メリットを感じています。従来のようにお客様の各拠点にVPNで接続する必要はなく、すべてクラウドベースで監視・管理を行えるようになりました。お客様と同じ画面を見ながらリモートでトラブルシューティングができるなど、障害発生時の状況把握や対処は大幅にスピードアップしました」(高木氏)
上記の成果を踏まえつつ、同社はこのWANインフラをさらに発展させていく計画です。
「弊社が今後さまざまな新事業を展開していく中で、ユーザーの多様な働き方やIT活用を支えるネットワーク環境を整備していく必要があります。そのためには例えば端末単位でもSD-WANにアクセスできることが重要で、ゼロトラストを実現するSASE(Secure Access Service Edge)についても導入を検討しています」と俣野氏は話ししており、社内と社外といった既成観念にとらわれることなく、いつでもどこからでも最適な経路でアプリケーションにアクセスできる環境づくりを進めていこうとしています。
プロジェクトメンバー
お客様情報
お客様名 | 三星ダイヤモンド工業株式会社 |
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WEBサイト | https://www.mitsuboshidiamond.com/ |
カスタマープロフィール | スクライビング、ブレイキング、穴あけ、パターニングなどの加工方法をオリジナル刃先やレーザー発振器による最適なプロセス条件の下、高い生産性で実現する自動加工装置を開発・製造・販売。1935 年の創業以来培ってきた「様々なガラスに対する高品質カッティング技術」を駆使し、「あらゆる硬脆性材料と、さらには金属、有機物を含む多層構造」に対応可能な加工プロセスおよび装置・工具を提供している。 |
導入パートナー | |
導入製品 |
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※本記載内容は2021年8月現在のものです。