アプリケーション志向を実現するVMware Tanzu Application Platform
この問題を解決するには、開発者は機能要件、すなわちコードを書くことに集中し、非機能要件については運用者が集中的に管理する体制を作ることが必要です。開発者の観点では、徹底的な自動化と抽象化で、インフラを意識せず開発生産性を高めることを意味します。運用者の観点では、やはり自動化による本番環境における迅速なデプロイの実現やセキュリティ・ガバナンスの担保などが必要とされます。このような体制を実現するためには、Kubernetesに足りない部分を補う、アプリケーション志向のプラットフォームが必要です。
このようなコンセプトに基づき、VMwareが提供するソリューションが、VMware Tanzu Application Platformです。Tanzu Application Platformは、アプリケーションの開発・稼働に必要なインフラを抽象化するとともに、コンテナ環境に高いレベルでのガバナンスを提供します。その結果、開発者はインフラや非機能要件を意識することなく、アプリケーションの要件定義に集中することができます。また運用者にとっても、開発の自由度や本番環境への迅速な投入と強固なセキュリティを両立し、安定したプラットフォーム運用が可能になります。
VMwareがTanzu Application Platformで実現を目指すのは、以下の3つのポイントです。
(1)アプリケーション開発に主眼を置いたソリューション
VMwareの原点は、サーバ仮想化によるインフラの抽象化でした。その結果、運用者の管理負担を軽減し、インフラに柔軟性をもたらしました。VMwareが次に目指すのは、アプリケーションレイヤーでも抽象化を提供することで、モダンアプリケーション開発を促進し、開発者と運用者の負担をさらに軽減することです。その実現にとって重要なソリューションが、Tanzu Application Platformです。
(2) 機能要件と非機能要件の責任分界点
開発とインフラの両方に精通したフルスタックエンジニアがいれば、インフラを意識したアプリケーション開発にも対応できると思われるかもしれません。しかしその育成は極めて困難です。どちらかが疎かになることで要件を満たさないシステムができたり、あるいは優秀なエンジニアに属人化してしまい、メンバーが変わると開発・運用に支障をきたす事態が考えられます。機能要件を担うアプリケーション開発と、非機能要件を担うインフラ運用は、いま一度明確に分離すべきというのが、Tanzu Application Platformの立場です。
(3)ベンダーロックインの回避
Tanzu Application Platformのベースとなる技術は、オープンソースソフトウェア(OSS)によって構成されています、そしてVMware自身が、それらのOSSの開発に積極的に貢献しています。その結果、技術への投資が特定のベンダーに依存することを防ぎ、得た知見をVMware以外のプラットフォームと組み合わせ、今後新たに登場する技術でも応用できることを目指します。
次に、Tanzu Application Platformの具体的な特徴をご紹介します。Tanzu Application Platformは、サブスクリプションモデルを採用し、Kubernetes上にインストールすることで利用できる製品です。Amazon EKSなど主要クラウドのマネージドサービスやvSphere上のKubernetesを正式にサポートするだけでなく、保証対象外とはなりますが標準的なKubernetes環境であればどこでも利用することができます。
またTanzu Application Platformは、先に述べた通りOSSをベースとした製品です。特筆すべき点は、VMware自身によるOSSだけでなく、さまざまな企業が開発しているOSSを組み合わせた製品であることです。例えば、Googleが中心となって開発しているKnativeやTekton、HerokuとVMware（旧Pivotal）によるCloud Native Buildpacks、SpotifyによるBackstageなど、様々なOSSを採用しています。そして不足している部分も、VMware自身がコアコントリビューターとして、OSSの開発を進めています。将来的には、Tanzu Application Platformの全ての構成要素を、OSSとして利用できることを目指しています。
