他社ハイパーバイザーで運用していた仮想基盤をVMware vSANベース のHCIに移行し、クラウドERPのインフラを高度化
クラウドERP製品「ZAC」「ZAC Enterprise」「Reforma PSA」を提供している株式会社オロ(以下、オロ)は、日々の運用管理に多大な工数を費やしていた既存の仮想基盤の課題を解消するため、VMware vSANをベースとするHCI 「Dell EMC VxRail」 への移行を進めています。仮想マシンの集約率の向上や仮想マシンの短時間での展開、柔軟なノード追加やハードウェアのアップデート作業の省力化によりインフラチームの作業負荷軽減を図るとともに、クラウドERP製品のサービスのさらなる高度化を支えていくインフラの基礎を築きました。
導入前の課題
- ノードの追加や共有ストレージの増設・拡張が非常に困難
- ユーザーの利用規模の拡大による、ストレージのI/O性能が逼迫
- 日々の運用に工数を割かれてしまい、サービス改善に手が回らない
導入効果
- ノードやストレージなどのリソースの増強が容易に
- ファームウェアやハイパーバイザーの更新作業時間を大幅に短縮
- 仮想マシンごとにストレージ要件やサービスレベルを定義してサービスを改善
「私たちが望んでいたのは、より汎用的な方法で迅速かつ簡単に運用や拡張を行うことができる仮想基盤です。単純にノードを追加すれば、オンライン状態のままで既存のクラスタのCPUやストレージ容量、I/O性能をリニアに増強できるVMware vSANベースのHCIは、まさに理想的なソリューションでした」
プロジェクトメンバー
インフラ運用の課題を解決すべくHCIに注目
業務改善・経営効率化を支援するクラウドソリューションを展開するオロ。代表的なソリューションであるクラウドERP製品「ZAC」「ZAC Enterprise」「Reforma PSA」は、案件・プロジェクト型ビジネスに最適な機能の数々を特徴とする強みを発揮し、ベンチャーから上場企業まで累計1,000社を超える豊富な導入実績を誇っています。
また、ユーザー企業のミッションクリティカルな基幹業務を担っているだけに、オロとしてもクラウドERP製品を支えるインフラには常に細心の注意を払っています。
オロ クラウドソリューション事業部 製品開発グループ シニアインフラエンジニアの西端敏裕氏は、「私たちのミッションは、お客様に対して常に安定したサービスを提供することにあり、システム停止を限りなくゼロに近づけていかなければなりません。また、お客様のデータを決して欠損させることがあってはなりません」と話します。
具体的にはオロでは、1クラスタあたり7台のサーバーおよび2台の物理ストレージで構成された3ティアの仮想基盤を導入。合計10クラスタのインフラからクラウドサービスを提供してきました。そうした中での問題は、このインフラ運用に多大な工数を費やしていたことです。
オロ クラウドソリューション事業部 製品開発グループ チーフインフラエンジニアの小林樹津生氏は、「サーバーのファームウェアやハイパーバイザーのアップデートが毎月のように発生するのですが、実施に際しては必ずクラスタを停止しなければなりません。この作業を10組あるクラスタすべてに対して繰り返すことになります」と話します。そして「インフラチームとしても、お客様により快適なエクスペリエンス(体験価値)を提供するためのサービス改善に注力したいのですが、日々の運用にメンバーの工数を割かれ、なかなか手が回らない状況でした」と明かします。
加えて近年では、この仮想基盤の拡張性の弱さも深刻な課題となっていました。各クラスタで運用しているユーザーの利用規模が拡大するにつれ、ストレージのI/O性能が逼迫する状況が見られはじめたのです。「インフラを増強するためにはクラスタ単位でリソースを追加する必要があり、迅速に手を打つことが困難でした」と小林氏は語ります。
こうしたインフラ運用の課題を解決すべく、オロが以前より注目してきたのがHCIで、2020年1月より本格的な導入検討に入りました。
ハードウェアを柔軟に選択し、汎用的な方法で運用や拡張を行える
クラウドサービスのインフラに対して、これまでなぜ柔軟なリソース追加ができなかったのでしょうか。既存の3ティア構成の仮想基盤では、ノード(サーバー)や物理ストレージの増設・拡張が非常に困難だったことが原因です。リソースを追加するにはクラスタ全体を停止しなければならず、その後もシステムの動作が不安定になるおそれがあります。
特に共有ストレージの増設・拡張は、機種ごとの独自機能や手順を熟知している必要があり、ベンダーの手を借りなければなりません。
「私たちが望んでいたのは、より汎用的な方法で迅速かつ簡単に運用や拡張を行うことができる仮想基盤です。その意味からも、単純にノードを追加すればオンライン状態のままで既存のクラスタのCPUやストレージ容量、I/O性能をリニアに増強できるHCIは、まさに理想的なソリューションでした」と西端氏は話します。
そして数あるHCIの中から、オロが選んだのがVMware vSANです。
「他社のHCIやクラウドベースのHCIなども検証・検討しましたが、その中で仮想マシンの集約率を最も高められるのがVMware vSANでした。また、調査した他社のHCI製品では専用のアクセラレーターを使用しなければならないものもありましたが、VMware vSANではハードウェアを柔軟に選択することができ、ベンダーロックインされずに済む点を評価しました」と小林氏は話します。
なお、VMware vSANをベースとするHCIとして選定したのは、デル・テクノロジーズのDell EMC VxRail(以下 VxRail)です。
「VxRailはVMware vSphereのホストサーバーとして豊富な実績があり、そもそもヴイエムウェアはデル・テクノロジーズのグループ会社(2021年6月現在)であることから、総合的に見て両社製品の親和性は高いと考えました。実際、VxRailはアプライアンス製品としてハードウェアからソフトウェアまで、デル・テクノロジーズによる一括サポートを受けられることも大きなポイントとなっています」と西端氏は、この選定の理由を語ります。
さらに、サーバー仮想化のVMware vSphereとストレージ仮想化のVMware vSANによって、仮想基盤そのものの運用が大きく改善されます。
「例えばテンプレートから仮想マシンを展開したり、DRS(Distributed Resource Scheduler)の機能を利用し仮想環境の負荷状況に応じた仮想マシンの最適配置を自動化したり、従来の仮想基盤ではできなかったことがVMware vSphereでは可能となります。また、VMware vSANのストレージポリシーにより、仮想マシンごとにストレージ要件やサービスレベルを定義することができることも重要で、今後のお客様向けサービスの改善にも大きく貢献すると考えています」と西端氏は話します。
インフラチームの作業負荷を大幅に軽減
今回導入したVxRailは12ノードで構成されているのですが、最初の7ノードの導入をSIパートナーに任せ、その後に自分たちの手で5ノードを追加するという2段階のステップを踏んでいます。
「今後はインフラチームで必要なノードを追加していく運用を考えていることから、スキルを習得するために、あえてノードを分けて導入することにしました。実際に作業してみると従来の仮想基盤でネックとなっていたような苦労はまったくなく、マニュアルに従って新たなノードの設定を行い、ネットワークに接続し、電源を入れるという数ステップでクラスタに追加することができました」と小林氏は説明します。
こうして2021年1月に本番稼働を開始したクラウドサービス基盤は、インフラチームの作業負荷を大きく軽減させています。「VMware vCenterによりリソースの利用状況を把握し、各仮想マシンに対して柔軟にストレージを割り当てられるようになるなど、日々の運用はとても楽になりました」と小林氏は話します。
特に大きな工数削減をもたらしているのは、あらかじめ作成されたテンプレートからの仮想マシンの展開です。オロ クラウドソリューション事業部 製品開発グループ インフラエンジニアの堤達郎氏は、「これまでの仮想基盤では1人のメンバーが4時間以上を費やしていたプロビジョニング作業が、わずか1時間程度に短縮されました」と強調します。
そして現在、オロではVxRailのアップデート作業も自らの手で行うようになっています。「これまでもファームウェアのバージョンアップをインフラチームが内製で行ってきましたが、自動化されていない作業が多々あり、誰かが付きっきりで対応しなければなりませんでした。これに対してVxRailでは、週末にスタートボタンを押してから退社すれば、月曜日の朝出社したときにはアップデートが完了しています。このように今回のクラウドサービス基盤は、あらゆる場面で運用を効率化しています」と堤氏は話します。
もちろん運用の負荷軽減だけが改善点ではありません。「従来の仮想基盤は42Uのラックスペースに仮想マシンを48台しか実装できませんでしたが、今回のHCIでは110台の仮想マシンを稼働予定です。要するに仮想マシンの集約率を2倍以上に高めることができました」と小林氏。
こうした数々の成果を踏まえつつ西端氏は、「更新期を迎えた既存の仮想基盤を順次リプレースしていくとともに、VMware vSphereおよびVMware vSANの機能を最大限に活用し、インフラチームの技術スキルの成熟度を高めていきます」と話します。
その先では仮想化基盤からクラウドにネットワークを延伸したノードの冗長化、VMware vRealize OperationsやVMware NSXを活用した運用管理の高度化、VMware vSphere with Tanzuを利用したコンテナ管理なども視野に入れており、クラウドサービスのさらなる高度化を支えていく堅牢かつ俊敏性の高いインフラを実現していく考えです。
プロジェクトメンバーのご紹介
株式会社オロ
クラウドソリューション事業部
製品開発グループ
チーフインフラエンジニア
小林 樹津生 氏
株式会社オロ
クラウドソリューション事業部
製品開発グループ
シニアインフラエンジニア
西端 敏裕 氏
株式会社オロ
クラウドソリューション事業部
製品開発グループ
インフラエンジニア
堤 達郎 氏
お客様情報
お客様名 | 株式会社オロ |
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WEBサイト | https://www.oro.com/ja/ |
カスタマープロフィール | 「より多くの幸せ・喜びを提供し、世界に通ずる一流企業」となることを目標に、1999年に創業。卓越した発想力と最新の技術力をベースに、業務改善・経営効率化を支援するクラウドソリューションおよび、デジタルを基軸に企業のマーケティング活動をワンストップで支援するデジタルトランスフォーメーションに関するソリューションを提供している。 |
導入製品 |
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導入パートナー | 兼松エレクトロニクス株式会社 |
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※本記載内容は2021年6月現在のものです。